人間工学に関係する科学分野
人間工学の専門家は,人体測定学,バイオメカニクス,労働生理学,そして心理学からの科学的データを利用し,人間の能力と限界を判断します。
人体測定学:
からだのあらゆる部分の大きさについて研究する学問が人体測定学です。そのデータを利用することにより,各種の製品,家具,ワークステーションなどをさまざまな体格の人に合うように設計できます。人体測定学にはからだのあらゆる部分のデータが蓄積されていますので,何か製品を設計する際には一番適当な寸法を決めるのに役に立ちます。
たとえば,バックパック(リュックサック)を設計する際に子供の背中のデータを使えば,子供の体格に適した大きさの製品を作ることができます。
バイオメカニクス:
重いものを持ったり力を入れたりした時に,筋肉や骨格がどのように反応するかを研究する学問がバイオメカニクスです。体の各部分の動きや力のかかり方を知るために物理学や工学の法則を使っています。
バイオメカニクスのデータを使うことによって,人間工学の専門家は,たとえば重いバックパックを持ち上げる動作や背負う動作をするときに,筋肉や関節,骨に力がかかりすぎることがないかを判断することができます。また,ある重さのバックパックに腕,肩,背中を痛める危険性があるかどうかを判断することもできます。右の絵の男の子の腕,肩,背中は大丈夫でしょうか?
労働生理学:
いろいろなタイプの仕事や運動をしているときに,私たちのからだがどのように反応するかを研究する学問が労働生理学です。
循環器系,呼吸器系,消化器系や筋活動などのシステムがどれくらいまで耐えられるかといったデータを収集し,疲労や過労を防ぐのに役立てています。
たとえば,重いバックパックを背負って歩き回るのにどのくらいのエネルギーが必要かといったことを生理学では見積もることができます。また,山登りにはたくさんのエネルギーが必要で,特に荷物が重ければ非常の多くのエネルギーが必要になる,といったこともわかります。
心理学:
私たちの心はどのように働くのか,またどのように行動するのかを研究する学問が心理学です。感覚はどう働き,注意や動機は行動にどのような影響を及ぼすのか,私たちはどう考え,どう問題を解決していくのかといったことを研究しています。心理学はまた,私たちが子供から大人へどう発達していくのか,行動したり決定したりするときに感情がどのような役割を果たしているのか,といったことも扱っています。人間工学の専門家は,人間の精神や行動の限界を超えないように,ものや仕事などを設計するために心理学を使っています。
たとえば,人間工学の専門家が子供用のバックパックを設計する際には,子供たちにとって使い方がわかりやすいものを,と心がけています。それだけでなく,「かっこいい」デザインであることも重要です。
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FPDの人間工学ガイドライン検討委員会
Last modified: May 23, 2000