【開催日】:2010年6月19日~20日
【場所】:北海道大学
【寄稿者】:中田真梨子さん[プロフィール]
はじめに
平成22年6月19日・20日、日本人間工学会第51回大会が北海道大学学術交流会館で開催されました。私が人間工学研究室に配属されたのは今年の4月。今までに「人間工学」に触れたのは3年前期の授業のみでした。そこで、発表される先輩の応援としてだけでなく、人間工学への見解を広げたいと思い、初めて学会に参加しました(本シンポジウムのお手伝いも兼ねて)。
本大会ではシンポジウム、ワークショップ、パネルディスカッション、口頭発表、ハイブリッド発表と様々な形で発表がおこなわれていました。
1日目
小講堂でおこなわれた「設計デザイン」の口頭発表と「習熟・操作・設計デザイン」のハイブリッドのセッションに参加しました。身近な生活用品をテーマにしたものから、ディジタルヒューマンに関する研究まで、多様な研究成果が発表されていて驚きました。
2日目
「安全・事故・交通」のセッションに参加しました。続いて、同じ研究室の古志祥子先輩が発表された「視覚」のハイブリッド発表に参加しました。場所が第三会議室で少し狭い部屋だったためか、部屋に入りきれないほどの人がいました。
シンポジウム
学会webサイトを活用した産学官民連携支援と社会発信のシンポジウムに参加しました。
ニーズ対応型人間工学展開委員会
まず、榎原先生より、ニーズ対応型人間工学展開委員会の組織構成(ニーズ調査WG・HCD-WG・GIAP共同推進WG・若手人材支援WG・学術WG・アドバイザリーメンバー)について説明がありました。 その後、各WGでの活動内容が報告されていました。その活動内容について以下に記していこうと思います。
人間工学ニーズ調査結果概要―産学官民における人間工学の現状と課題―
ニーズ調査WGの神田直弥先生より、(1)「人間工学」という学問分野の浸透度、(2)学生と産業・行政の能力意識の差異、(3)人間工学会ホームページのアクセス分析の結果、についての報告がなされていました。特に、人間工学はユニバーサルデザイン、ユーザビリティ、安全・安心といったイメージが多く、逆に、環境や教育などのイメージは少ないという報告に興味を持ちました。
人間中心設計プロセスに基づく学会webサイトリニューアル
人間工学会のホームページをリニューアルするにあたっておこなわれた、旧ホームページのアクセス状況と、状況解析から導かれた新しいホームページに求められるコンセプトについて、HCD-WGの五十嵐友子先生が報告されました。旧ホームページへのアクセスは“お気に入り”からが多いこと、さらに30秒以内にサイトから出る人が多いとの報告でした。ホームページをリニューアルする上で新しいホームページは「人間工学の知の広場(Agora)」をコンセプトとし、産学官民各セクターが求めるコンテンツの提供を目指すとの報告がされていました。
産学官民連携を促す支援策
「モノ」だけでなく「ヒト」に注目して、人間工学家を紹介していく企画と、工芸部門の企画について、GIAP協同推進WG松岡敏生先生が報告されました。人間工学家の紹介は学会ホームページの「ピックアップ・がんばる人間工学家」にておこなわれるとのことでした。まだ連載は始まっていませんが、人間工学家の方がどのような仕事に携わっているのかなど興味があり、非常に楽しみです。
人材育成支援における学会の果たすべき役割
若手研究者の育成として「誰に対して」「どのような支援を」「どのように」「誰が行うべきか」について若手人材支援WGの水野有希先生が報告されました。今までは大学生以上を中心に支援を考えていたが、今後は小中高生にも支援していくべきで、その手段として、出前講義の推奨をされていました。私自身、人間工学という学問を知ったのは大学に入ってからでした。身近な存在なのに認知度が低い学問だと思うので、出前講義は必要であると感じました。
時代の多様化する学術ニーズに学会はどのように応えるべきか
人間工学会が抱える学術的ニーズ課題について学術WGの大内啓子先生が報告されました。学術データベースの整備の必要性などについての報告がなされていました。その中でも私が一番興味を持ったのは、「人間工学を習得したいと思っても、その機会は都市部にほとんど集中している」との報告でした。私は広島の地方学生であるため、この報告に危機感を感じました。情報の発信をしていただき、地方と都市との格差を解消していただきたいと思いました。
意見交換
各WGの先生方の発表終了後におこなわれた意見交換では、ニーズ対応型人間工学展開委員会とシンポジウムに参加していた先生方や学生との意見交換が活発に行われました。その中でも、出前授業やホームページに関する質問・コメントが多くありました。
幅広いユーザーに合わせたホームページを作ることは困難だとは思います。しかし、情報社会の中で信頼性の高い内容を伝えるのは学会のホームページの役割の一つだと思うので、今後、より内容を充実させていただきたいと思いました。
終わりに
「百聞は一見にしかず」という言葉のとおり、学会に参加させていただくことにより人間工学について肌で感じることができました。普段、研究室にいるだけだと分からないような研究や情報を知ることができ、とても有意義な時間を過ごすことができただけでなく勉強にもなりました。