学会沿革
日本人間工学会の沿革
-揺籃期から一般社団法人日本人間工学会設立まで
人間工学は、社会に役立つ実践的な科学技術です。実践的であるほど、適用される地域の風土・慣習・教育・産業等の諸要因により、異なる導入や発展をたどることになります。しかし、人間中心設計(Human centred design)という人間工学の原則は、いつでもどこでも変わらずに適用される考え方です。このことは、グランジャン教授により執筆された世界で最も広く読まれている人間工学のテキスト”Fitting the task to the man, Taylor & Francis出版”のタイトルによく表れています。ヒトの特性に合わせて仕事や機械を設計しようという提案です。この考え方が、人間工学のキーワードです。
日本人間工学会は、1964年12月1日に発会式を行っています。1964年当時は、10月1日に東海道新幹線が営業運転を開始し、10月10日には東京オリンピックが開会するなど、経済成長率が年平均10%を続けるというわが国が飛躍的な経済成長を示した時期でもあります。1965年1月に創刊された学会誌「人間工学」第一巻第一号では、「東海道新幹線における人間工学」を特集しています。
日本人間工学会が設立された1960年代の学会揺籃期から最近のトピックスを年表として下記に示すことにします。この間、1974年には人間工学の国際標準化を審議するISO/TC159人間工学委員会が設置され、わが国は1986年から投票権を有するPメンバーとして国際規格制定へ大きな貢献をしています。また、1982年には第8回国際人間工学連合(IEA)東京大会を開催し、日本人間工学会理事の杉山貞夫氏が1982年にIEA会長に就任するなど、国際的にも活発な活動を行ってきています。2009年には、国の公益法人制度の抜本的改革にともない、公益性を持った学術団体である一般社団法人日本人間工学会を設立し、健康で安全な社会実現に貢献するための活動を行っています。
日本人間工学会の主な沿革
年 | 項目 |
---|---|
1963年9月 | 日本人間工学会設立発起人会の開催 |
1963年12月 | 日本人間工学会設立総会及び第1回研究会開催(東京) |
1964年5月 | 第2回研究会開催(大阪) |
1964年12月 | 日本人間工学会設立 本川弘一氏を会長に選出 第3回研究会開催(東京) 学会員数:約530名 |
1965年1月 | 学会誌「人間工学」創刊(季刊) |
1965年5月 | 日本人間工学会第4回大会開催(仙台) |
1965年5月 | 国際人間工学連合(IEA)に加盟 大島正光氏がIEA理事に就任 |
1965年12月 | 日本人間工学会第5回大会開催(東京) 学会員数:1,000名 |
1966年6月 | 日本人間工学会第6回大会開催(名古屋) |
1974年 | ISO(国際標準化機構)の中に TC159(人間工学委員会)が設立される |
1975年6月 | 安全人間工学部会が設立、橋本邦衛氏が部会長に就任 |
1977年 | 日本人間工学会が中心となって提案した”ISO 1503:1977 Geometrical orientation and directions of movements(方向性及び運動方向通則)”が国際規格として制定される。 |
1981年3月 | 看護人間工学部会設立(準備部会)、塚原進氏が準備部会長に就任 |
1981年6月 | 人間工学設計の基本原則に関する国際規格”ISO 6385:1981Ergonomic principles in the design of work systems (作業システム設計のための人間工学の原則)“が制定される。 |
1982年 | 第8回国際人間工学連合(IEA)東京大会を開催 |
1983年 | 人間工学講座(あるいは人間工学研究室)を設置している大学は12大学(13研究室)、講義を開講している大学は27大学計34科目に(人間工学vol.19(5) ) |
1985年10月25日 | 20周年記念講演会(於:日大会館) 20周年記念特集(vol21(6) 1985) |
1986年 | 日本がISO/TC159のPメンバー(投票権を有するメンバー)となる 日本人間工学会がISO/TC159の国内審議団体となる 日本人間工学会の中にISO/TC159国内対策委員会を設置する |
1987年 | 日本人間工学会が中心となって提案したISO 1503:1977(Geometrical orientation and directions of movements)がJIS 規格(JIS Z8907:1987)として制定される |
1996年5月 | 日本・韓国両国人間工学会の学術交流として、日韓合同シンポジウムを開催 |
1998年 | インターネット基盤揺籃期において、日韓学術交流会議のインターネット放送の先駆的取り組みが試みられる(日本人間工学会第38回大会) |
2003年8月 | 人間工学専門家を認定する資格制度が発足 |
2009年6月 | 日本人間工学会第50回記念大会開催(つくば) |
2009年7月 | 一般社団法人日本人間工学会を設立 |
2010年3月 | 学会誌「人間工学」創刊号からJournal@rchiveのWebサイトで公開 |
2010年6月 | 第1回定時社員総会開催(第51回大会時 北海道大学) |
2011年3~8月 | 東日本大震災へ学会からのメッセージ等を発信 |
2011年5月 | 福島第一原子力発電所事故へ安全人間工学委員会が意見表明 |
2012年2月 | 国際人間工学連合(IEA)副会長に藤田祐志氏が就任 |
2014年6月 | 日本人間工学会第55回大会(学会設立50周年記念大会) 開催(神戸) |
2015年8月 | 国際人間工学連合(IEA)会長に藤田祐志氏が就任 |
2017年6月 | The 2nd ACED(大会長 小谷賢太郎)の開催 |
2019年6月 | 学会英文名称をJapan Human Factors and Ergonomics Societyに変更 |
歴代会長
氏名 | 任期 | |
---|---|---|
1期 | 本川弘一 | 1964年12月1日~1967年3月31日 |
2期 | 本川弘一 | 1967年4月1日~1969年3月31日 |
3期 | 本川弘一 | 1969年4月1日~1971年2月3日 |
4期 | 高木貫一 | 1971年4月13日~1973年3月31日 |
5期 | 大島正光 | 1973年4月1日~1975年3月31日 |
6期 | 大島正光 | 1975年4月1日~1977年3月31日 |
7期 | 大島正光 | 1977年4月1日~1980年3月31日 |
8期 | 大島正光 | 1980年4月1日~1983年3月31日 |
9期 | 大島正光 | 1983年4月1日~1986年3月31日 |
10期 | 大島正光 | 1986年4月1日~1989年3月31日 |
11期 | 大島正光 | 1989年4月1日~1992年3月31日 |
12期 | 大島正光 | 1992年4月1日~1995年3月31日 |
13期 | 林 喜男 | 1995年4月1日~1998年3月31日 |
14期 | 大久保堯夫 | 1998年4月1日~2001年3月31日 |
15期 | 大久保堯夫 | 2001年4月1日~2004年3月31日 |
16期 | 大久保堯夫 | 2004年4月1日~2007年3月31日 |
17期 | 斉藤 進 (2009年7月1日 一般社団法人日本人間工学会設立) |
2007年4月1日~2009年6月30日 |
理事長
氏名 | 任期 | |
---|---|---|
1期 | 斉藤 進 | 2009年7月1日~2010年6月19日 |
2期 | 斉藤 進 | 2010年6月19日~2012年6月9日 |
3期 | 青木 和夫 | 2012年6月9日~2014年6月5日 |
4期 | 青木 和夫 | 2014年6月5日~2016年6月25日 |
5期 | 堀江 良典 | 2016年6月25日~2018年6月2日 |
6期 | 吉武 良治 | 2018年6月2日~2020年6月13日 |
7期 | 吉武 良治 | 2020年6月13日~2022年6月18日 |
8期 | 鳥居塚 崇 | 2022年6月18日~2024年6月22日 |
9期 | 鳥居塚 崇 | 2024年6月22日~2026年定時社員総会時まで |