アクションプラン
2007年度報告及び2008年度計画
日本人間工学会理事長 斉藤 進
2008年6月
日本人間工学会(以下、学会)は、2007年度から第17期として3年間の新しい活動を開始しました。最終年となる2009年度は、1974年に法人化委員会を設置して以来、念願の一般社団法人を設立する画期的な事業年度となりました。期首に掲げた第17期(2007年4月~2010年3月)の活動目標を、改めて以下に示します。
- 人間工学を社会常識とすることにより、安全で安心できる社会を実現
- 社会ニーズ及び学術ニーズに沿った存在感のある学会を指向
- 人間工学により問題解決が可能となるサクセスストーリーを展開
第17期学会活動として特徴の一つは、設置する委員会や担当理事の所掌について、常設委員会・担当と臨時委員会・担当とに分離したことです。常設委員会は、例えば、広報委員会のように情報を広く開示するとともに人間工学を社会へ啓発する役割を担うことや、編集委員会のように学術ニーズと社会ニーズに沿った学会誌を定期的に刊行することや、国際協力委員会のようにIEA(国際人間工学連合)等との継続的な連携を図るなど、長期的に事業を行う活動です。臨時委員会は、期間を限定し得られた成果を学会として組織的に活用することを目的とし、新たに設置したものです。
2007年度の活動について
2007年度の活動で最も新しい事業の一つは、広報委員会が開始したグッドプラクティスデータベースの運用です。人間工学を実践的に活用した商品開発及び職場改善等の良好事例を収集し、ホームページで公開を始めています。2008年6月に共立女子大学で開催した第49回大会の公開シンポジウムでも好事例等を紹介し、産官学など多くの領域で賞賛されています。データベース運用は継続的な公募による活動であり、今後とも会員・非会員を問わず皆様からの積極的な応募を期待しています。認定人間工学専門資格制度が、2007年5月にIEA認証を取得し国際的な資格になったことと、応募しやすい新たな二つの制度を導入したことも特記すべき内容です。
臨時委員会活動の一部を紹介します。将来計画委員会は、一層の学会活性化と社会貢献を図るため学会活動や運営上の課題を整理し、新たな観点からの提言を2008年度総会に報告しました。将来計画委員会報告書は、学会ホームページで公開しています。上述したグッドプラクティスデータベース運用や若い研究者を対象とした優秀研究発表奨励賞授与等、すでに提言を実施している事業もあります。人間工学基礎講座のシラバス作成や小中学校での人間工学スクール実施等、人間工学の知識を産業界や子どもに普及させる提言等も、社会へ向けて人間工学を展開するために必ず実現したいと考えています。支部・部会担当理事は、長年にわたり同じ考え方を適用してきた支部・部会に関わる課題や適切な改善提言を期待して設置したものです。担当理事からの提言等をもとに、2008年6月には直接の責任者である支部長及び部会長にご参集いただき、2008年12月末までに意見集約をした上で、2009年度計画に反映させたいと考えています。
2008年度の活動について
2008年度に活動している委員会や担当等の一覧を表に示しました。新たに、企業の人材育成プログラム開発委員会を臨時委員会として設置しました。はじめに述べたように、学会第17期の活動目標として、安全で安心できる社会を実現し、社会ニーズや学術ニーズに沿った学会活動を目指しています。言うまでもなく、人間工学は、実社会で活用され実践されることにより、使いやすい機器が開発され、働きやすい職場が実現されることに存在意義と社会的使命があります。企業において人間工学の必要性が強く認識されている現在、人間工学教育シラバス作成等により人材育成プログラムを開発する同委員会は、学会が組織を挙げて成果を世に問うという大きな覚悟のもとに設置したものです。
人間工学分野の規範的ガイドラインを学会として策定するため、人間工学研究ガイドライン検討委員会を新設しました。また、主務官庁制を廃止した新たな公益法人制度が、平成20年12月1日に施行されます。学会の悲願である法人化の実現が目前です。日本人間工学会第50回記念大会は、2009年6月10日(水)~12日(金)に独立行政法人産業技術総合研究所の赤松幹之氏を大会長とし、つくば市で開催されます。50回という区切りのよい大会であり、また企業の方々が重要業務として参加しやすい学会として将来計画委員会が提言している平日開催であり、若手研究者や企業等からの要望に応える好企画が多くなることを期待しています。
学会活動の報告と現時点で計画している事業の要点を、簡単に紹介させていただきました。詳細は、総会資料やホームページをご覧いただきたいと思います。これら学会が行う諸事業に対し、多くの方々のご協力とご支援を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。
日本人間工学会2008年度 委員会/担当等一覧
委員会/担当名称 | 担当理事・委員長等 | 活動のポイント |
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総務担当 | 斎藤真、三林洋介、 青木和夫* |
*第50回記念大会所掌 |
財務担当 | 垣本由紀子、 外山みどり |
業務運営見直しによる経費節減 |
広報委員会 | 吉武良治 | HPによる情報公開及びグッドプラクティスデータベースの運用 |
編集委員会 | 加藤象二郎 | 学会誌の編集・発行及び大島賞と研究奨励賞受賞候補者の選考 |
国際協力委員会 | 堀江良典 | 国際人間工学連合、日韓共同シンポジウム、その他の国際協力活動 |
ISO/TC159国内対策委員会 | 横井孝志 | ISO/TC159に関わる規格審議 |
表彰委員会 | 阿久津正大、 平柳要 |
表彰制度及び細則等の検討、優秀研究発表奨励賞及び功労賞受賞候補者等の選考等 |
日本学術会議担当 | 斉藤進、 青木和夫 |
学術会議との連携及び安全工学シンポジウム2009開催準備等 |
認定人間工学専門家部会 | 青木和夫 | 認定試験と再認定実施及び資格制度広報等 |
委員会/担当名称 | 担当理事・委員長等 | 活動のポイント |
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企業の人材育成 プログラム開発委員会(新設) |
酒井一博 | 人間工学の実践的普及に役立つ中核的人材育成方法の開発 |
将来計画委員会(終了) | 青木和夫 | 次世代JESの在るべき組織・事業等に関する提言→総会時公表 |
人間工学技術戦略委員会 | 藤田祐志、 富田豊委員長代行 |
ロードマップのローリング及びロボット分野ARM研究部会との連携 |
人間工学研究ガイドライン 検討委員会 |
横井孝志 | 人間工学分野の規範的な研究ガイドラインを学会として策定 |
支部・部会・大会担当 | 福田康明、斎藤真 | 支部・部会担当:支部長及び研究部会長意見を反映させた活動見直し案を2008年12月末に策定 大会担当:年次大会の効率的運営方策等の提案 |
法人化担当 | 大久保堯夫 | 一般社団法人の登記及び公益認定の申請(2008年12月1日新法施行 |