1.5 新しい手続き規格:人間中心のユーザビリティ管理規格の誕生 | |
工業材料や製品の試験方法について基準を細かく決めた従来の製品規格(code of specification)と異なり人間工学標準は人の働きやすさの設計ガイドライン作成を目指した手続き規格(code of practice)の性格が強い。たとえば製品設計の基礎「人体測定項目・測定方法の標準化(ISO 7250)」や普遍性の高い「視覚表示装置(VDT)を用いたオフィス作業の人間工学的要求条件」(ISO 9241シリーズ)」などは良い例である。 更に手続き規格の典型、ISO/DIS13407 "Human centred design process for interactive systems"「インタラクティヴシステムの人間中心の設計過程」はソフトの人間中心のユーザビリティ管理を目指す意図で審議されている規格であり、もう少しでISになろうとしている。品質一流、安全、使いやすさ二流と言われる日本は固有技術や経済性中心で動いているので、パラダイムシフトが必須とされる21世紀に生き残るにはこのような規格を取り込む事は日本にとり大きな課題である。ところが今まさに完成しようとしている規格に対して、日本の企業は組織も人材の準備も出来ていないと心配されている。日本のソフト関連企業は欧米に取り残されるかもしれないとの心配が現実にならぬためには学会や産業界と行政がISO規格にもっと関心を持ったほうが良いのではないか。 技術から人へ、シーズよりニーズ優先のタスク志向の人間中心技術 Human centred system designを日常化せねばならない。情報・通信技術の発達は時 間・空間の制約を崩壊させつつあり真に人間に役立つためには人間の認知行動特性に整合した個人差を吸収できるインターフェイス、ソフトウエア技術が必要である。人間工学ISOの関心はこのようにハードからソフトへ徐々に移行しつつある。 操作具配置の標準化が自動車の普及に貢献したように、ISO 9000シリーズが消費者中心の品質管理に貢献したように、そして今、環境管理ISO 14000シリーズが企業の経営理念を会計監査から環境監査へ革命的に変革させているように、ISO 13407「人間中心のユーザビリティ管理」は間違いなく近未来世界の常識になるであろう。規格をコピーする時代は終わり、自らも加わり、参加する創造の時代に入った事は間違いない。規格を制する者は時代を制すると言うがそのような時代が今到来したと言っても過言ではない。 | |