1.3 IEA(国際学会)はISOとも交流する舞台 | |
TC159総会が1997年6月、2年ぶりに開かれた。フィンランド、タンペレ市でIEA(国際人間工学会)が開催されたのを機会にTC159総会、SC3総会、SC3/WG2専門家会議、SC4/WG3専門家会議など4つのISO/TC159関連会議が開催された。今回の特徴はアジアからの積極的参加が注目を引いた。日本の他にタイ、韓国、中国の複数代表の参加がこれからのISO を彷彿とさせた。 タイの代表はタマサート大学工学部経営工学科人間工学研究室のス−プサック教授で、アメリカの大学で教鞭を執って8年、工学部新設と共に母国に帰り現職に就いた。ISOの経験は全くないそうだが、見識、グローバルな視点などISO会議に相応しい代表だ。SC3総会は99年にタイのバンコックで開催予定と決まった。期待が膨らむ。韓国もSC4総会を昨年11月ソウルで力一杯開催した。そのホスピタリティーは大変好評だった。 総会の主要議題の一つは任期満了による議長交代と後任人事であった。次回総会までの暫定議長として、ドイツ経営者連盟の人間工学代表の Mr.Shulutetus が満場一致で推挙された。新旧ともドイツ人で心理学ベースの人間工学者 Nachreiner 教授から実務家への交代である。 3年に一度のIEA大会には世界各地から人間工学の研究者、技術者、実務家など約2600人が参集した。長い冬から解放された北欧の地は清潔で湖が美しく、会場となった人口数万の大学町は深夜1時でも空がうす明るい白夜で、街角のレストランやビアホールはどこに入っても学会参加者に出会うと云った調子。いい具合に過ごしやすい気候の下こじんまりと人間工学関係者であふれ賑わっていた。 前回トロント、その前のパリの時も同じ様にIEAの機会にISO会議が開催された。た だ、今回はTC159総会の他にもSC3の総会や複数のWGが開催され、規模は大きかった。 ISOとIEAが同じ場所と時期に行われる事実は欧米では国際規格審議に従事する人間工学エキスパートは国際人間工学会も活動舞台としていることを端的に示してい る。学会とは純粋学術的な研究交流の場であるだけでなく、産業応用としてのISO実践経験交流の場でもあると言うことだ。 日本では学会のセッションでISO規格の応用場面や規格審議に関する経験交流的な成果報告はあまり活発ではない。ISO/JIS関連のシンポジウムや発表があるとすれば、むしろJENCが広報目的で編成する場合が多かった。自発的にエキスパートの経験をまとめる発表例はない様に見受けられる。日本人間工学会がISO実践経験交流の場として発展の余地があることを間接的に示している。 人間工学領域で実践活動を交流する機会が今後もっと増えていくことと思うが、産・官・学の有機的な関係は未だ我が国の産業社会で充分形成されているとは言い難い。そのために何が必要かと言えば、学会が狭い研究課題に閉じこもっていないで、もっと社会に開かれた存在にならなければいけないのではないか。産業界や行政に係わる専門家や実践家が気楽に来れて相互に経験や研究を交流できる場に熟していく可能性がまだ秘められているのだと思う。 | |