1.3 上昇中「人間工学ISO/JIS」知名度
TC159国内対策委員会委員長
堀野定雄

昨年はJENCにとり記念すべき年でした。一つはJIS規格原案作成事業に国として学会への委託事業費を従来より多い予算を付けて頂いた点です。これまでの実績が評価されたのだと思います。関係者一同の努力が実りつつあることは喜ばしい限りです。委託事業を支えてくれている日本規格協会によれば人間工学は重点領域の一つだそうです。JIS規格も年度末に原案提案として提出した物を含めて20位完成しました。JENCとして1994年最初のJIS規格が発行されました。その時将来を展望してJIS-8000番台を予約して貰い、全ての規格に枕詞として人間工学を付けることを決定しました。この先見性は今になって効果を上げてきています。このように上昇中の人間工学規格に対する周辺の大きい期待に答えられるように関係者の組織的努力と学会員の一層のご理解と支援を期待します。

次の特徴はISO13407(通称、ユーザビリティ管理規格)の制定(1999)から間髪を入れずにJIS化したことです。認証を伴ってやって来ると言うことで産業界は沸騰中です。産業界での人間工学浸透のよい機会が来ていると言うことです。後になって歴史をふりかえれば、数年前のPL法制定と相俟って、どちらかと言えば技術優先だった日本の工業技術が名実ともにバランスの取れた人間中心、ユーザ志向の技術や製品設計にシフトして行く曲がり角の年になるように期待しています。

3つ目。日本のプラント制御技術、高速鉄道・道路交通管制技術、原子力発電所中央制御室の設計運用技術等の蓄積を背景に産学協同の知識と経験を複合的に結集して、日本人がプロジェクトリーダになり国際的に初めて提案した人間工学規格が制定され、間髪を入れす国内規格化の為に提案したのがISO-11064-1(JISZ 8503-1)「人間工学―コントロールセンターの設計−第1部コントロールセンターの設計原則―」です。JCO臨界事故を未然に防止できなかった日本の原子力安全技術の課題は世界の注目の的になりました。とても、残念です。未来に向かって日本から提案して承認されたこのコントロールセンターの設計原則が産業現場で日常的に普及し更に発展するように温かく皆で育てていただければ幸いです。

新しい動きがありました。SC1/WG4:日用品のユーザビリティ規格がドイツから提案されました。新業務項目投票では日本はイギリスと共に反対しました。しかし、通過すると即座にエキスパート登録をして積極的に会議に参加して反対意見を胸に秘めながら建設的な国際貢献をしています。加藤象二郎分科会委員長の指導の基、積極的意欲的なメンバーが国際会議に欠かさず参加し、日本の存在を示しています。2000年8月サンディエゴ会議:田村 博、加藤象二郎、細野直恒、鈴木一重、2000年12月ミュンヘン会議:加藤象二郎、鈴木一重、2001年4月北京会議:小松原明哲、福住伸一、服部 薫(鈴木一重氏後任)。今後本規格は議論を呼ぶことでしょう。学会員も興味を持って係わっていただければ日本の層が厚くなって状況はよくなると思います。


ISO/TC159 国内対策委員会
Last modified: Sep 7, 2001