第4回:「人間工学研究と研究倫理:新統合指針のポイントと人間工学研究への対応 」
■開催日時 2016年5月11日(水) 17:30~20:30
■開催場所 名駅モリシタ名古屋駅前中央店 第1会議室
■参加者 11名
平成26 年12 月に疫学倫理指針と臨床倫理指針を統合した「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が告示されました。人間工学はヒトと環境との相互作用を扱う学際領域であり、その研究の多くは新統合指針に準拠する責務があります。一方、実務者・初学者は研究倫理について体系的に学ぶ機会は少ないのではないでしょうか。本講座では新統合指針のポイントを分かりやすく解説し、人間工学研究で配慮すべき事項を学びます。
講師プロフィール
榎原 毅
名古屋市立大学大学院医学研究科 講師
博士(医学)。名古屋市立大学大学院医学研究科満期退学。
専門は産業人間工学・作業関連疾患予防策、産業疫学統計ほか。
JES 理事・「人間工学」副編集委員長。
概要
疫学倫理指針と臨床倫理指針を統合し平成26 年12 月に告示された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に沿って、人間工学研究に不可欠な研究倫理について名古屋市立大学の榎原毅先生よりご解説いただきました。人間工学はヒトと環境との相互作用を扱う学際領域であり、その研究の多くは新統合指針に準拠する責務があります。本講座では、新統合指針のポイントを分かりやすく解説いただき、倫理規範の二本柱である、研究倫理(Clinical Research Ethics)、公正な科学的活動と社会的責任(Research Integrity) の視点から人間工学研究で配慮すべき事項を学びました。
前半は、多忙な研究者や実務者、初学者も研究倫理に関心を寄せることができるよう、人間工学研究における倫理的配慮の必要性を理解することを目指しました。天然痘ワクチンの開発に至る実験の事例や「ヒポクラテスの誓い」などを見ながら倫理観の変遷などを学び、新統合指針により何がどう変わったのか、何が新たに求められるようになったのか検討しました。そのうえで、新統合指針は基準の強化よりも、むしろ研究上の公正さや柔軟かつ広範な研究の拡大を可能にすることを示していただきました。
後半は、現在の研究動向を踏まえ、ビッグデータ解析のなかで起こり得る偶発的所見への対応方法、既存のデータの二次利用に関する留意点、包括同意によるデータ解析の条件を踏まえたインフォームドコンセントの取り方など、時代の変遷とともに変わる研究手法への具体的な対応方法を学習しました。
具体的な研究計画を想定した倫理的配慮の解説を受け、参加者の皆様も熱心にメモを取りながらご参加くださいました。休憩中や質疑の時間にも参加者それぞれの視点から多くの質問が寄せられ、研究に求められる倫理的配慮や社会的責任への関心の高まりを感じる盛況の講座となり、落ち着きながらも熱気を帯びたまま閉幕となりました。大阪・東京・京都からも多数ご来場いただきました。
(文:名古屋市立大学・庄司直人)
受講者アンケート結果
講座内容の満足度については、60%の方が非常に満足、40%が満足と回答いただいております。また、講座内容の理解度についても、非常によく理解できた・理解できたと回答した人が90%でした。
下記は自由記入コメントです。今後の測定技法講座の運用に役立てて参ります。
■本日の講座に関するご質問・ご意見など(一部抜粋)
・医療関係の方は、新統合指針の事を知る機会が多いのですが、別の領域の人はあまり知る機会がないような感じがします。そのような研究者の人達と共同研究していると、倫理の考え方の違いが生じてしまう感じがあり、うまく研究が進まなくなるかもしれないという不安があります。
・倫理審査の実態(評価ポイント、技術的なレビュ、会場設営、審査時間など)の情報もあれば参考になると思いました。
・人間工学の分野の研究で、どこから倫理審査委員会に申請しなければいけないのかがよく分からず、本日の講義を受けました。実験の被験者のインフォームドコンセントを文書で得る方法を知り、今後の参考にします。
・研究倫理という点において最もセンシティブに扱う必要がある医学の視点からお話を伺うことができ、非常に参考になりました。また、これまで実験参加をした時に受けた内容説明の意図について一段と理解ができました。
・ぼんやりと理解していたつもりになっていた事項を明確に示されていて大変役に立った。
・とても学ぶことの多い内容でした。ありがとうございます。
■今後の講座企画に対する要望・意見など