大会長 増田智恵(椙山女学園大学)
大会実行委員長 井上尚子(椙山女学園大学)
はじめに
2023年11月11日(土)に,日本人間工学会東海支部2023年研究大会が,椙山女学園大学(名古屋市)にて開催されました.当日は数日前の暖かい陽気から一変して朝夕の冷え込みが厳しい日となりましたが,東海地区のみならず,関東や関西など全国各地から多数の方々にご参加いただきました(学会員27名,一般非会員11名,大学院生・学生32名,計70名).プログラムは,午前中に一般演題2セッションと特別講演1件,午後に一般演題2セッションと企画セッションで構成されました.また,本大会では4年ぶりに懇親会も開催され,コロナ禍以前と同様のプログラム,規模での開催ができました.
一般演題
般演題では24件の発表があり,2セッションずつ同時並行で実施されました.プログラムの詳細は本大会Webページをご覧ください.セッションでは,東海支部で精力的に取り組まれている看護分野,医療労働分野を中心として,スポーツのパフォーマンス関連,自動車運転や映像酔い,作業支援システム,聴覚や視覚情報の認知,モーションキャプチャなど,バラエティに富んだ最新の研究が発表され,活発に議論されていました.いずれの演題も実生活に基づく最新の話題が取り上げられ,専門分野外の立場から聴講しても,非常に興味深い研究内容でした.
企画セッション
企画セッションでは,人間工学専門家認定機構による「活かそう! 人間工学専門家」と「人間工学」編集委員会による「人間工学誌に投稿しませんか?」という2つのテーマを実施しました.前者のセッションでは,人間工学専門家認定機構から3名を迎え,東京電機大学の矢口氏からは人間工学専門家資格制度の紹介,資格取得のメリットについて,パナソニックの岡田氏からは資格制度の改訂について紹介がありました.さらには,兵庫県立工業技術センターの平田氏からは,認定人間工学専門家資格を活用した自らの業務について事例を交えた紹介が行われました.後者のセッションでは,論文誌編集委員であるトヨタ自動車の牧口氏から,学会誌への論文投稿のポイント,特に今期の編集委員会が注力している「実践報告」について紹介があり,参加者へ積極的な投稿の呼びかけも行われました.支部活動だけでは得られない貴重な情報が得られ,今後の人間工学への取組のアウトプットの方向性を検討するよい機会となりました.
特別講演
特別講演では奈良女子大学教授才脇直樹氏をお迎えし,「日常生活を見守るウエアラブルなインターフェイスの事例紹介」の演題でご講演いただきました.生活の質の向上や身体機能を助けるウェアラブルデバイスが注目される中,才脇氏にはヒューマンインターフェース,人間情報学をご専門とされる立場から,また,日本で初めての女性だけの工学部という観点から,時折ユーモアを交えつつ,大変わかりやすくお話いただきました.
講演の概要は,以下のとおり.
ウエアラブルコンピューティングとして,身に着けられるスマートテキスタイルを用いて,心電図計測等による健康の見守りシステムを開発している.センサと衣服を一体化することで非侵襲的な計測が可能となり,計測も容易になる.また,外出時に女子学生が身に着けることがあるカチューシャに紫外線センサを組み込んで「紫外線計測カチューシャ」の開発も行った.これは携帯電話網を利用することで,リアルタイムの紫外線量,紫外線を避けた移動ルートの提案などの応用が期待できる.「健康管理のためのにおい計測ポシェット」も日常で身に着ける被服によるセンシングであり,ウエアラブルな製品である.
他に,世界で初めての,女子大生がデザインした人間と触感コミュニケーションできるアンドロイドの紹介,触感評価時のMRIによる評価など,ロボット,センサとウエアラブルなインターフェイスを組み合わせた日常生活のモニタリングについて多方面から紹介があり,非常に有益な特別講演でした.
若手奨励賞
プログラムの最後には,一般演題より事前申請された研究発表9件を対象とした若手研究奨励賞の発表及び授与式がありました.最優秀奨励賞には高橋奈里氏(名古屋市立大学大学院M1),優秀奨励賞には菱川直輝氏(三重大学大学院M2)ならびに三岩功季氏(三重大学大学院M2)の3名の方々が,東海支部長斎藤真氏(三重県立看護大学)より授与されました.審査委員長藤掛和広氏(中京大学)からは,今大会は事前に提出された抄録を対象に一次審査を行い,二次審査として当日の発表を複数の匿名審査者が聴講して,研究目的,方法・分析,考察・結論,独創性,表現の5項目について審査を行った.一次審査を含め,各発表の得点差が僅かであり甲乙つけ難く,東海支部の若手のレベルが高まっていることが紹介された.東海支部長斎藤真氏から,東海支部では若手の研究発表を奨励しているが,毎年,研究発表の質が高く,非常に楽しみであり,受賞者や若手の研究者には今後も継続して研究を続けていただきたいとの講評があった.
受賞された皆様には,今後も自信をもって活躍していただきたいと願っています.また,次年度以降も,多くの若い方々が研究大会でご発表の上,若手研究奨励賞にチャレンジしてくださることに期待します.
懇親会
大会終了後は大学構内の教育学部食堂F19に移動し,大会長の椙山女学園大学増田智恵氏による司会進行のもと,懇親会が開催されました.懇親会には20名を超える方々にご出席いただき,寿司や揚げ物などを中心とした食事とお酒が進む中,支部長の斉藤真氏はじめ多くの方々が各人の思いをお話しくださり,出席者同士の交流を深めました.
おわりに
微力な大会長ではありましたが,本大会は参加者や役員の方々、多くの皆様のおかげをもちまして,盛会のうちに終了いたしました.大会開催に際し,実行委員会ならびに東海支部役員の皆様には多大なるご尽力をいただきました.また椙山女学園大学の職員の方々には,大会会場につきまして便宜を図っていただいたとともに,椙山女学園大学増田,井上研究室の学生諸氏には,当日の円滑な運営にご協力いただきました.この場を借りまして,皆様に深く感謝申し上げます.