人間工学測定技法講座 第9回レポート

 

第9回:「ココロのはかり方:質問紙調査のキホンのキのキ」

■開催日時  20161222日(木) 16:3019:00
■開催場所  オフィスパーク名駅プレミアホール会議室
■参加者   5名

講師プロフィール

神田 幸治
名古屋工業大学大学院工学研究科 准教授
博士(人間科学)。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は応用認知心理学、交通心理学ほか。
日本人間工学会東海支部役員・「人間工学」編集委員

 

 

概要

 質問紙調査は、ヒトの意識や態度、行動や属性などを調べるための伝統的な手法であり、様々な分野で多用されています。人間工学の分野でも、製品の使いやすさや生活環境、作業環境などを評価したり、研究対象者の属性を調べたりするために利用されています。質問票を利用してヒトの主観的評価を数量的に表現するためには、質問項目設定への正しい理解と調査票の適切な設計が必要です。本講座ではまったくの初学者を対象として、実験や調査、検査で使用される質問紙調査の設計から分析に至るまでの、基本中の基本「のみ」についてやさしく説明しました。

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講義の前半は、質問紙調査の基礎として知っておくべき基礎概念について紹介いただきました。目に見えない心の働きをどのように測定するのか、「人間が主観的に感じる感覚量は非線形である」という心理量(感覚量)の説明を導入として、心理尺度の概念や採用される研究手法に至るまで概説いただきました。また、質問紙調査や後の解析で必要となる独立変数・従属変数の考え方や尺度水準についても丁寧に説明いただいた上で、測定の信頼性・妥当性の考え方に多くの時間を費やし、分かりやすく解説頂きました。質の高い調査研究を行うためにも、質問紙調査の設計に際し押さえておくべき重要な基本概念を包括的に紹介頂きました。

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後半は、手続き編として質問紙の設計・項目作成時の留意事項などを中心に解説いただきました。質問文のワーディング(言葉づかい、言い回し、あいまいな言葉、あいまいな構文、難解な言葉、ステレオタイプの言葉など)の注意事項や、威光暗示効果(権威ある人の見解や一般に流行していることを先に示すことで回答を誘導してしまう効果)、キャリーオーバー効果(ある質問への回答が後の質問を誘導してしまう効果)、ダブルバーレル質問文(1つの質問文中に2つ以上の論点が入っている質問)など、質問紙の設計の際に注意すべき基本事項をまとめて頂きました。その後、質問の回答形式について、リッカート法、SD法、グラフ評定法(Visual Analogue Scaleなど)、多肢選択法、順位法、一対比較法などの利点や注意点について詳細に解説いただきました。
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今回の講座は「キホンのキのキ」と銘打ってますが、それは「簡単な内容」という意味ではなく、「質の高い適切な質問紙調査を実施するために知っておくべき重要な内容」を「キホンのキのキ」として3時間に凝縮して解説いただいた講義でした。ここまで体系だった講義を拝聴する機会は珍しく、応用認知心理学者である神田先生による貴重な講義となりましたが、当日の天候不順の影響等により参加者が通常より少なかったのは残念でした。

最近では量的研究・質的研究を統合したアプローチである「混合研究法」が注目されています。また、近年ではwebベースの学術調査も普及しつつあり、その利点と限界に関する関心も高まりつつありますので、今回のような講義は今後ますますニーズが高まってくると思われます。

受講者アンケート結果

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受講者は少ないですが、講座内容の満足度および理解度についても高く評価頂きました。

本日の講座に関するご質問・ご意見など(一部抜粋)

・とても分かりやすく説明して頂き、勉強になりました。
・講義資料を電子データで頂けるとありがたいですが、難しいでしょうか(持ち帰って関係者と共有しやすくなります。プリントに落書きしてしまいました)。
・非常に分かりやすく教えて頂きました。質疑応答が良いと思いました。

<今後の講座企画に対する要望など>
・グループインタビューの仕方(実技)とその記述の仕方・まとめ方
・論文作成に適した(査読に通りやすい?)データ収集・解析のコツ、間違えやすい点などをお話頂けるといいように思います。
・web調査に関する講座(進め方、メリット/ディメリットなど)
・統計解析法