人間工学測定技法講座 第5回レポート

 

第5回:「心理量のはかり方:心理尺度のキホンのキ」

■開催日時  2016624日(金) 16:0019:00
■開催場所  三重県立看護大学(JES57 回大会会場)講義棟3階 講義室4
■参加者   17名
質問紙調査や官能検査は、製品の使いやすさや生活環境、作業環境を評価したり、ヒトの意識や態度を調べるために多用されます。生理指標や行動指標と異なり、主観的評価を数量的に表現するためには、心理尺度の正しい理解と適切な調査用紙の設計が必要です。本講座では、まったくの初学者を対象として、実験や調査、検査で使用される心理測定の基礎中の基礎を解説します。あわせて、質問紙調査の留意事項についても説明します。

講師プロフィール

kanda神田 幸治
名古屋工業大学大学院工学研究科 准教授
博士(人間科学)。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は応用認知心理学、交通心理学ほか。
JES 東海支部役員。「人間工学」編集委員。

概要

05-2本講座では,人間の感覚や主観的な意識や態度,評価内容を測定する心理量及び心理尺度の考え方とその使用について,二部構成でお話をしました.前半での「基礎知識」篇では,そもそも心理量や心理尺度とはいったい何なのかを,具体例を挙げつつ紹介するとともに,概念や変数,言葉などを扱う際には操作的定義が重要であることを説明しました.そして,心理量を扱う心理学研究法として,実験法,調査法(質問紙調査法),観察法,検査法,面接法の各手法を概説し,独立変数と従属変数,尺度水準などの各基本事項について整理しました.また,前半のメイントピックである心理測定の信頼性と妥当性の種類や内容について,詳細に説明しました.最後には質問紙調査の長所と短所を列挙し,主に行動指標や生理指標が扱われる人間工学であっても,適切な手続きに則れば質問紙調査によるデータは極めて有効であることを議論しました.

後半の「手続き」篇では,質問紙調査の手続きについて取り上げました.時間の関係上,本講座では質問文,質問形式,調査票の適切な作成方法と留意事項に焦点を絞り,それぞれ具体的かつ詳細に例を挙げながら説明しました.特に,質問文では言葉遣いや言い回し(ワーディング)の問題,質問形式では評定尺度法や順位法などの回答方法の紹介や特徴,調査票作成は構成やレイアウト,フェースシートの内容などについて,講師のこれまでの経験をtipsとして織り交ぜつつ,実践的な内容に即して解説しました.
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前半と後半の最後に設けた質疑応答の時間では,参加者から研究遂行上の悩みに関する積極的な質問を多数いただき,意見の共有をはかりました.

「人間工学と看護」がテーマである日本人間工学会第57回大会の企画ということもあり,参加者には看護・医療系の仕事に携わる方々が多数みられました.そのために本講座では測定「技法」講座の冠を掲げつつも,当該領域で頻繁に実施される質問紙調査について,初学者や実務者の方々が知っておくべき基礎事項の解説に重点を置きました.特に前半は理論重視であり,「技法」という枠から多少離れたきらいのある講座でしたが,参加者の皆さんは非常に熱心に受講してくださいました.またこの講座をきっかけとして,初対面同士で繋がりの生まれた方々が参加者にいらっしゃったことは,講師役として望外の喜びでした.

受講者アンケート結果

アンケート_kanda講座内容の満足度は,非常に満足・満足に回答した方が88%でした.また理解度について,本講座は基礎内容が多数含まれた内容であったためか,非常によく理解できたと回答した方は18%でしたが,残りの82%の方が理解できたと回答していらっしゃいます.

■本日の講座に関するご質問・ご意見など(一部抜粋)

・言葉の定義をかみ砕いて説明していただけたので、とても理解しやすかったです。これからの研究にすぐ活かすことができる内容を多く学ぶことができました。ありがとうございました。

・これまで経験的に、感覚的に行ってきていたことを整理して頂いたように感じます。受講して良かったです。ありがとうございました。データ分析以降の部分を次回企画して頂けれと嬉しいです。

・基礎的なところの内容について、忘れているところもありましたので、とても復習になりました。質問紙の作成については、とても具体的な話を伺うことができ、実際に活用できそうです。

昔、習った(であろう)事を再びしっかりおさえていただき、とてもありがたかったです。「例え」がとーってもわかりやすくて感動しました!!そしておもしろかったです。もっと続きがききたいです。(分析手法とか)

・基礎的な知識を再確認でき、大変有意義でした。今度は応用的な(特定の集団ケースを想定した場合)などの講座があると、参加してみたいと思います。

・負担感などの調査票、科学的確証は必要な場合が多い。こういう確証必要な尺度を独自作成したい場合、おススメの方法がありますか?それとも専門家の意見を聞くしかないでしょうか。

・現在、尺度開発をしています。今後まだまだ壁はたくさんあると感じました。何かありましたらご相談させていただきたいです。

・学会誌に掲載されていた「人間工学のための計測手法(1)」(山下利之先生)の質問紙による計測と解析と読み比べながら、受講させてもらったので、理解が深まりました。ありがとうございました。

・今回の続きの講座もおききしたいと思いました。今日はありがとうございました。

・時間が足りなくて残念でした。もう少しじっくり聞きたいので、次回是非実施してほしいと思います。