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GL-106 腰痛・肩こり予防活動ガイドブック

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ガイドライン概要
概略

ISO(国際標準機関)は、腰痛・肩こりなどの運動器疾患の予防を目的とした技術仕様書ISO/TS20646-1“作業中局所筋負担軽減のための人間工学的改善手順”を2004年に発行しました。職場における運動器疾患問題を解決するためには、作業条件の改善や適切な保健指導・教育を通じて一次予防を行うことが重要です。本技術仕様書は、職場における局所筋負担を軽減するための手順および改善方法を具体的に示しており、各職場でどのように改善活動を行えばよいかの指針がまとめられています。私たちは、本技術仕様書に基づく国際協力プロジェクトを2003年より行っており、その経験を基に「腰痛・肩こり予防活動ガイドブック」としてまとめました。

対象利用者・活用場面など

産業保健スタッフ(主に安全衛生担当者や管理監督者、産業看護師や産業医など)の他、現場作業者の方にもご利用頂けます。

使い方の説明

「腰痛・肩こり予防活動ガイドブック」では、自主対応型改善活動を行う際の着眼点および実施手順の概略が紹介されています。主に中小企業向けの社内啓発活動用に作成したものです。下記に、ISO/TS20646-1に基づき私たちが行っている取り組み手順を紹介いたします。ただし、ここに示した手順は代表的なものですので、事業所規模や職場の状況に応じた手順を考えてください。詳細な手順やチェックリスト例については参考文献を参照してください。

  1. 事業主あるいは総括安全衛生管理者、対象職場の管理者および作業者の代表、衛生委員会メンバーなどの参加者を組織します。
  2. 事業主あるいは総括安全衛生管理者が前出の附属書Aを参考にして、事業所における腰痛・肩こりの現状、解決すべき課題、解決するための組織・責任者、解決の基本計画などについて文書で公表します。リスク軽減策の効果を評価するために、ベースライン時の状況を附属書Dを用いて評価します。
  3. ハザードの特定:衛生委員会などで、附属書Bを利用し、腰痛や頸肩腕障害発生の原因となる可能性のある要因を小グループ討議により列挙・整理します。この作業には、総括安全衛生管理者など事業所の責任者が必ず参加するようにしてください。通常は30分程度でハザードの同定を行います。なお、参加者が10人以上になる場合には、5~8人の小グループを構成します。
  4. ハザード要因を参考にして、附属書Cのアクションチェックリスト項目を職場の状況に適するように加筆・修正します。
  5. 作業点検:加筆・修正した附属書Cを用いて、各人が対象職場を巡視します。改善の必要性があると思われる項目をチェックします。同時に、対象職場で既に行われている良好事例を発見し、記録します。
  6. 各人の点検結果を持ち寄り、小グループで、職場で実際されていた改善事例、改善を要する点、優先して実施すべき改善課題について討議します。討議に基づき、優先して改善すべき1~3課題を決定します。その際、具体的な改善策(実施可能性などを考慮)を話し合います。
  7. 改善の実施:対象職場において、改善の必要性と改善方法の概要を説明し、職場全体のコンセンサスを得ます。必要な技術援助を受けながら、職場全体で改善策実施に取り組みます。
  8. 活動の点検と修正:職場の管理者・作業者および職場外の人(安全衛生担当者など)による改善実施状況の評価を行い、それに基づき改善策を修正します。改善実施1ヶ月後頃に行います。
  9. 改善効果の評価と新課題の設定:改善に対する職場での満足度、主観的局所筋負担感を附属書Dにより調査、ベースライン時の調査結果と比較・評価します。更なる課題の再設定を行い、活動を継続します。

※詳細は参考資料・活用事例・文献を参照のこと。

ガイドラインを使うことによる利点、期待される効果など

本技術仕様書に基づいた作業関連運動器疾患予防活動は、タイ国立作業条件環境改善研究所(NICE)メンバーとの国際協力プロジェクトにより、日本・タイ両国の様々な職場において実践応用されています。

  • 企業内における、自主対応型腰痛予防活動を展開することで、職場における安全衛生活動の活性化に貢献
  • 製造ライン作業など、筋作業を伴う作業の腰痛軽減策の評価指標として利用可能
  • 低コスト改善および良好実践の水平展開など、現場主導による職場改善活動を通じて、安全・健康を重視する職場文化の形成に貢献
活用事例・文献・URLなど
  • Takeshi EBARA, Toru ITANI et al(2007) Impact of ISO/TS 20646-1 ‘Ergonomic procedures for the improvement of local muscular workloads’ on work-related musculoskeletal disorders, Ind Health 45(2) 256-267
    <Industrial Health誌サイトよりPDFダウンロード可能>
  • 井谷 徹、榎原 毅:職場の腰痛・肩こり予防マニュアル―ISO技術仕様書(ISO/TS 20646)による作業関連運動器疾患予防活動―,(社)人間生活工学研究センター, (2004)
  • 労働者住民医療機関連絡会議・全国労働安全衛生センター連絡会議 編:頸肩腕障害などの上肢障害認定マニュアル、(株)アットワークス, p.227-229, (2007)
図表ファイル・参考資料ファイル
オリジナルの出典

<ISO 20646-1>

  • The International Organization for Standardization (2004) ISO/TS 20646-1 ‘Ergonomic procedures for the improvement of local muscular workloads ?Part 1: Guidelines for reducing local muscular workloads’. ISO, Geneva
    <ISO Onlineサイトより原文を入手可能>
推薦者

日本人間工学会 広報委員会

お問い合わせ
企業名・担当部署名

名古屋市立大学医学研究科

担当者名

榎原 毅 様

更新日

2011年09月09日



 


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