会報・人間工学専門家認定機構 Vol.76

Vol.76 2025年2月26日
会報・人間工学専門家認定機構広報担当

目次

報告

一般社団法人日本人間工学会「ピックアップ がんばる人間工学家」

人間工学専門家認定機構では,一般社団法人日本人間工学会広報委員会(以下,JES広報委員会)と合同企画して,同委員会の連載企画「ピックアップ がんばる人間工学家」の企画,取材等を行いました.JES広報委員会では,webで記事を公開していますが,改めてその概要を本機構でも紹介いたします.

JES広報委員会企画「ピックアップ がんばる人間工学家」
兵庫県立工業技術センター 平田 一郎さん

松岡敏生(三重県工業研究所)

今回,ご紹介するのは兵庫県工業技術センター生産技術部・上席研究員の平田一郎さんです.平田さんは,兵庫県の公設試(*)である工業技術センターに勤務して,産業デザイン,人間工学という側面から兵庫県内の中小企業等の技術的な支援を行なっています.

工業技術センターの業務としては,依頼試験や機器利用,共同研究などを行なっていますが,平田さんが担当する人間工学分野では他の生産技術や材料分析とは異なり,ほとんどが企業との共同研究になります.特に兵庫県工業技術センターでは,テクノトライアルという特徴的な制度があり,その制度を利用して企業支援を行なっています.

一般的に公設試の機器を利用する場合,機器の利用者(企業)が自ら機器を操作,測定,加工しますが,テクノトライアルでは工業技術センターの職員が機器を操作して測定や分析を行います.

人間工学関係は,材料試験のように決まった方法での試験は少ないので,このテクノトライアルの利用が非常に好評をいただいているそうです.テクノトライアルで予備実験,可能性試験を行い,そこからもっと長いスパンで行う共同研究へと発展させることが多く,人間工学GPDBにも産学共同研究の成果であるED-164 通学用子供カバン SPRINGLOBE™が掲載されています.

人間工学GPDB掲載の通学用子供カバン(ランドセル)の共同開発では,ユーザーが子どもとなるため,被験者実験を行う場合,夏休みや春休みといった休みの期間を利用せざるを得なく費用も時間もかかってきます.この限られた期間での本実験を行う前に,被験者の代わりにマネキンを利用した測定,分析などの詳細な予備実験を行い,実験に供する試料のスクリーニングを行って本実験に臨んだそうです.
テクノトライアル,共同研究という制度も素晴らしいですが,それを実行する平田さんをはじめとする兵庫県立工業技術センター職員の皆さんも素晴らしいものと感じました.

公設試の業務は,現場に近く横断的な幅広さが必要とされ,深い専門性を持つ大学の研究開発を大学病院での診療,公設試の業務は地域のかかりつけ医による検査などとよく言われます.
さらに平田さんは,公設試での材料分析などは西洋医学的,人間工学的な支援業務は東洋医学的という説明をされていました.これは,材料分析などは,試験方法がわかっていることが多く,それに合う機器を処方してという対応となり,その結果も比較的わかりやすい.それに対して,人間工学,デザイン開発の支援では,ぱっとすぐには結果が出ないものが多いと感じており,じわじわと実験をして結果を出していくことが必要となり,いろいろな処方を組み合わせて結果を出していくこともあります.決められた方法もあるようでなかったりするので,東洋医学的だと感じているそうで,興味深い考察と思いました.

JES広報委員会企画の「ピックアップ がんばる人間工学家」に本報告の詳細(https://www.ergonomics.jp/topics_j100/interview_010.html)が掲載されていますので併せてご覧ください.

 

*公設試:公設試験研究機関の略称.地方自治体が設立した機関で,工業系の公設試では地域の中小企業の技術に関する相談窓口として様々な支援を行っています.全国の公設試は専門分野ごとにネットワーク関係を構築しており,例えば人間工学関係では各機関で保有する機器について,地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが中心となり,Database of Human Life Engineering(DHuLE)としてまとめ,公開しています.詳細は,DHuLE のサイト(http://www.dhule.jp),または人間工学GPDB,GP-129(下記)をご覧ください。公設試験研究機関 人間生活工学機器データベース DHuLE(Databese of Human Life Engineering)

報告

日本人間工学会支部研究大会での広報活動

人間工学専門家認定機構では、支部研究大会や支部イベントで人間工学専門家認定機構及び人間工学専門家の広報活動を行っています.今回は,東海支部2024年研究大会、2024年度日本人間工学会関西支部大会での活動を報告します.

 

日本人間工学会東海支部2024年研究大会

松岡敏生(三重県工業研究所)

 2024年11月2日(土)に,愛知工業大学で開催された日本人間工学会東海支部2024年研究大会の企画セッションで「活かそう! 人間工学専門家 人間工学専門家認定機構」と題して、資格制度の報告、資格取得のメリットやその活用方法などを報告しました.

研究大会には学生参加者も多く,指導教員の先生方を含め学生向けに,就職活動での資格活用事例等の説明も行いました.また,東海地域にはものづくり企業が多く,研究大会にも企業からの参加も多く見受けられます.

企業参加者から,2024年に制度改定されたプラクティショナーへの問い合わせもあり,今後の資格取得が期待されます.


2024年度日本人間工学会関西支部大会

佃五月(シャープ株式会社)

 2024年11月30日(土)に,摂南大学(寝屋川キャンパス)で開催された2024年度日本人間工学会関西支部大会にて,特別講演前にお時間をいただき,認定人間工学専門家資格制度について紹介しました.

企画セッション「活かそう! 人間工学専門家」と題して,本資格制度の説明と資格取得のメリットなどを紹介することで,本制度の魅力をお伝えしたいと考え企画しました.当日は質疑応答の時間が取れませんでしたが,別途,前向きなお問い合わせもいただきましたので,資格取得を目指すきっかけになるとよいです.

特に関西支部は,会員数に対する専門家資格(CPE)保有率が全国の支部の中で最も高く,関心も高いと思われました.また準専門家も多いことから,今後の専門家へのステップアップも期待されますので,今後も継続的な広報活動が必要と感じました.

専門家の新規登録

  • 認定人間工学専門家 五十嵐僚、坂東拓也、山井洋一
    (2024年11月1日認定)
  • 認定人間工学準専門家 野々田幸恵、加藤悠芽、田淵実貴、吉川実花、前川眞一、原田侑季、三富菜々、長谷川美鈴、桑田若海、金川大貴、荒木智葉、髙橋泰崇、小竹一世
    (2024年5月1日認定)
    大塚南海、平松昂也、松平理弥、後藤周作、澤里玄太、田中剛史
    (2024年11月1日認定)
    大脇裕之、土井康一郎、月本晴菜、大戸貴美子、諸角有紗、井上陽斗、須賀瑞希、安木佑介
    (2025年2月1日認定)
  • 認定人間工学プラクティショナー 阿部悠一郎
    (2025年2月1日認定)

会員数

2025年2月20日現在(2024年4月1日からの人数増減)

  • 認定人間工学専門家        209名( – 7名)
  • 認定人間工学準専門家       206名( +24名)
  • 認定人間工学プラクティショナー 18名( +1名)
  • シニア認定人間工学専門家      18名( +3名)

編集後記

今号より広報を担当いたします、富士通株式会社の境と申します.経験のある松岡さんと一緒に会員の皆様のお役に立つよう努めて参ります.
デジタル社会においては、業界・業種の垣根を越え、多様な価値観を持つ人々が協働して未来を創造していくことが求められています.
この会報を通して情報発信を行うことで知の共創を活性化したいと思います.
ご意見・ご提案・寄稿大歓迎です.人間工学専門家認定機構に係る活動をされた際には是非一報お寄せください、お待ちしております.(広報担当 境)

過去のコラム一覧