Vol.75 2024年5月23日
会報・人間工学専門家認定機構広報担当
目次
- 報告:人間工学専門家認定機構 講演会2024
【講演報告1】「自動車の研究開発と機構の幹事活動 〜2つがもたらす相乗効果〜」
【講演報告2】「島津製作所における人間工学専門家の活動」 - 専門家の新規登録
- 認定状況
- 編集後記
報告
人間工学専門家認定機構 講演会2024
2024年4月19日(金)にTKP新宿カンファレンスセンターで開催された人間工学専門家認定機構総会にあわせて認定人間工学専門家による講演会を開催しました.
【報告】人間工学専門家認定機構 講演会2024
岡本郁子
【開催日】 2024年4月19日(金)15:00~16:40
【開催形式】現地とオンライン(Zoom)のハイブリッド開催
(現地会場:TKP新宿カンファレンスセンター)
【参加者】91名(現地28名,オンライン63名)
【概要】
2名の認定人間工学専門家による講演が行われました.
講演1:山田氏(本田技研工業株式会社)からは,人の研究が大事と信じて継続したことが,車酔いしにくい設計に繋がった事例,さらに,若手に向けたCPEの活動を紹介いただきました.「手を挙げてやってみると,周りが助けてくれる,夢に届く」というお言葉通り,あらゆることを常に前向きにとても楽しく取り組んでおられる山田氏の姿勢が印象的でした.
講演2:水本氏(株式会社島津製作所)からは,デザイン部門としてユーザーエクスペリエンスをデザインして開発を支援する業務において,新規事業における要求分析の方法として,これまでに無い全く新しいものを発想する際に実践しているKJ法について,上位下位関係分析と比較も交えて詳しくお話しいただきました.水本氏のKJ法への熱い思いが伝わってきました.
【講演1】「自動車の研究開発と機構の幹事活動 〜2つがもたらす相乗効果〜」
山田 幸子 氏(本田技研工業株式会社)
子供の頃,家族が車を購入した際の体験を通して,車に興味を持ったことから,将来車の会社で働く夢を公言することで,周りの方から様々なアドバイスを得て,エンジニアとして念願の会社に入社した.
車両の運動性能を担当する傍らで,社内では誰も手がけたことがない,乗り物酔いの研究に着手し,プロジェクトリーダーやデザイナーと共に乗り物酔いしにくい車を開発した.また,社内に人の研究が大事であることの認知を広めた.自分が開発に携わった車を街で見たり,SNSでお客様の声が見えたりするのは,とても幸せなこと.
CPE幹事としての活動紹介.2023年 日本人間工学会第64回大会では若手への専門家資格制度のPRを兼ねてJES若手支援委員会とコラボレーションし,ランチョンセミナーを開催した.活発な意見交換の場となり,好評を博した.
2023年関東支部第53回大会では,学生・若手支援カフェセミナー「ジブンとミライと人間工学」―学生同士や企業の先輩と思いを巡らす90分― を開催し,登壇者からも参加した学生からも,人間工学の活用の幅が広いことを実感したなどの声が多数あり,有益だったことが伺える. 皆さんと一緒にもっともっと世の中をhappyにしていきたい.
【講演2】「島津製作所における人間工学専門家の活動」
水本 徹 氏(株式会社島津製作所)
人間工学専門家として製品の企画・開発に携わっているが,業務の7割ぐらいはユーザー調査であり,現場に行くことが多い.ユーザーへのインタビューや現場の観察を行いお客様の困りごとを発見し,どうすればお客様に嬉しい体験を提供できるのかを考える.ここはクリエイティブジャンプが必要なので,人間工学専門家,プロダクトデザイナー,他の専門家などが持つ知識を総動員する.次に,プロトタイプを作成してユーザーによる受容性評価やユーザビリティ評価を繰り返しながら,ユーザーと仕様を練り上げる.
医療機器の事例では,病院で治療の現場を観察したり,医師にインタビューしたりし.実際の利用状況を知るための調査を行った.その結果を反映したラフなプロトタイプを作成して,実際のユーザー(医師)に評価をしていただいた.社内では,洗練されていないプロトタイプをユーザーに見せることに抵抗もあったが,実際に評価を実施してみると,医師からはラフな段階で評価できるのは嬉しい,これから修正できる要素が多いため意見を言いやすいと好評であった.このような活動によりユーザーへの提供価値を明確にした製品開発を行っている.
新規事業を考える時には,企画段階でのアイデア発想法としてKJ法を活用している.その目的は,仮説検証ではなく新たな仮説抽出である.よって,インタビュー調査では少しでも気になったことを幅広く調査することが重要であり,また,インタビューの発言メモはニュアンスや土の香りを残して書くことが重要である.それにより,収集した多くの声を,単なる分類で集めるのではなく,親近感を持つもの同士を集められるようになる.異質なものを組み合わせるからこそ,新しいアイデアが発想できる.
専門家の新規登録
- 認定人間工学専門家 小西唯夫、末吉美喜、濱口萌子
(2023年11月1日認定) - 認定人間工学準専門家 丸山勝、三井大地、赤木暢浩、武藤悠貴、坂口貴久
(2024年5月1日認定)
認定状況
2024年5月23日現在(2024年4月1日からの人数増減)
- 人間工学専門家 216名( ± 0名)
- 人間工学準専門家 187名( +5名)
- 人間工学アシスタント 17名( ± 0名)
- シニア人間工学専門家 15名( ± 0名)
編集後記
新年度を迎え,2年ぶりに派遣先から元の職場に戻りましたが,イントラシステムが一新されており,また,slackが導入されていたり,と環境の変化に驚いた年度初めでした.本報告の講演会にはオンライン参加でしたが,お二人の専門家から元気で前向きなお話を聞いているうちに,会場にいるかのように引き込まれていました.山田さんの講演にもありましたが,CPEの方々の仕事などへの向き合い方がやる気を起こさせてくれるのだと感じました.今後も講演会等が企画されることと思いますが,皆様も是非ご参加ください.(広報担当 松岡)